「不倫慰謝料」というと、みなさん、どのようなものを思い浮かべますか?
この「不倫慰謝料」というのは、自分の夫や妻が不貞行為を働いた場合、その配偶者と不倫相手に対して、精神的な苦痛を理由として請求する慰謝料のことです。
たとえば、自分の妻が他の男と不倫をした場合、不倫をした妻と相手の男に対して慰謝料を請求できるということです。
この不倫慰謝料を、妻子ある男性が交際していた女性に渡す、いわゆる「手切れ金」のことと勘違いしている方がたまにいらっしゃいますので、注意が必要です。
不倫慰謝料を請求する根拠となる条文は、以下の2つです。
・民法709条 「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
・民法710条 「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。」
最高裁判所の判例でも、不貞行為の相手方に対して、不倫慰謝料請求が認められています(最高裁判所昭和54年3月30日判決など)。
不倫相手に対して刑事上の罰を与えることはできませんが、民事上の請求(慰謝料の請求)は可能です。
ここで注意して頂きたいのが、法律上の請求は、あくまでも金銭、つまりお金の支払いに限られているということです。
「不倫相手に謝って欲しい」とか「不倫相手に土下座させたい」とか「不倫相手を殴りたい」などということは、法律によって実現できません。
逆に、無理に土下座をさせた場合は強要罪(刑法223条)、不倫相手を殴ってケガをさせた場合は傷害罪(刑法204条)、殴らなくても危害を加えることを伝えた場合には脅迫罪(刑法222条)に問われる可能性があります。
怒りで頭に血が上ったからといって、法律上認められない要求を相手方にしないで下さい。
「不倫をしたんだから何をしても良い」などと言うわけではありません。
あくまでも、民法上の慰謝料という金銭の請求ができるということです。
金銭以外の要求をして、無理やりさせた場合には、上記のとおり刑事罰に問われる可能性があります。
不倫慰謝料請求の裁判で判決まで行った場合、どのような点が金額を決める要素となるのでしょうか?
これまでの裁判例では、以下のような点が金額を決めるうえでの要素となっています。
・不倫関係の期間
・不倫関係の具体的な内容
・婚姻関係への影響(離婚まで至ったか否か)
・不倫関係発覚後の事情
・婚姻関係の長さや子どもの有無
・不倫関係に積極的だったか否か
・ことさら婚姻関係を壊そうと思っていたか否か
ただ、慰謝料というのか何か数式に当てはめて計算されるものではありません。
最終的には裁判官が判断するものです。
これまでの裁判例では50万円ほどから200万円ほどの範囲に収まるケースが多くみられますが、実際にみなさんのケースでいくらになるかというのは、事情によって異なってきます。
つまりご本人のケースでいくらくらいになるかというのは、インターネットでいくら検索してもわかることはありません。
まずは法律の専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。
「不倫」というと、古い時代には、「火遊び」とか「男の甲斐性」とか問題を軽く捉える方もいらっしゃいました。
しかし、この不倫。立派な離婚原因です。
民法でも、配偶者が不倫をした場合には、離婚を求めることができると定めています(民法770条1項2号)。
仮に、あなたの配偶者が不倫をした場合、配偶者がどんなに嫌がっても、調停を経た裁判で、最終的に離婚が認められることになります。
仮に、あなたが不倫をした場合、どんなにあなたが嫌がっても、配偶者から離婚を突きつけられたら、原則として離婚せざるを得なくなるのです。
ただ、不倫慰謝料請求は、単なる金銭問題ですが、離婚の場合は金銭だけでは片付かないケースが多いです。
特に、夫婦の間にこどもがいる場合には、親権をどっちが取るかなど、派生する問題がとても多くなります。
「離婚は、結婚の100倍以上のエネルギーが必要」とよく言われます。
不倫相手への慰謝料請求だけでなく、配偶者との離婚を考える方は、きちんと専門家に相談して、しっかりと準備をしてから、行動を起こすことをお勧めします。
名古屋駅の弁護士・片山総合法律事務所では、不倫慰謝料請求だけでなく、離婚についても、ご相談・ご依頼を受け付けております。
仮に、配偶者の不倫を機に、離婚をお考えの場合は、その後の不倫慰謝料請求の手続も変わってきますので、ご相談の際に詳しくご事情をお話いただければと思います。
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